フルート,ヴィオラとハープのためのソナタ
Deuxième Sonate pour Flûte, Alto et Harpe


I. 牧歌(パストラール) pastorale
II. 間奏曲 interlude
III. 終曲 finale

概説 :
ドビュッシーの室内楽作品は数が極端に少なく,その大半が最晩年に集中している。その理由の一つとして挙げられるのが,作曲者が最晩年に計画していた,いわゆる【6つのソナタ】であろう。彼は6作品からなる,それぞれ異なる楽器によって編成されたソナタを構想し(表紙に「異なる編成のための6つのソナタ(six sonates pour divers instruments, composées par Claude Debussy, musicien français)」とあることからも,当初からの計画であったことは明らかである),まず1915年に『チェロ・ソナタ』(第一番)と『フルート,ヴィオラとハープのためのソナタ』(第二番)を作曲。さらに翌々年には三作目となる『ヴァイオリン・ソナタ』を作曲した。こののち,オーボエ,ホルンとチェンバロのためのソナタ(第四番),トランペット,クラリネット,バスーン,ピアノのためのソナタ(第五番),コントラバス及び幾つかの楽器のためのソナタ(第六番)が計画されていたが,作者自身の死により,この計画は未完のままに残された。第二作となる本作は,三つのソナタ中最も大部であり,柔和で典雅な佇まいを持つ。当初はオーボエを加えた三重奏を構想していたとされる編成を,管2本の組み合わせを避けてヴィオラにしたことから見ても,循環形式を踏襲した書法を見ても,典雅でアルカイックな佇まいを重んじ,懐旧的な作風を意識して書かれたものと言って良く,作者自身も「パストラール」を評して,『夜想曲』当時の自分のようだと述べていたという。翌1916年に出版され,初演は第一番の直後,1917年4月になされた。



作曲・出版年 1915年9月〜10月。出版は1916年(デュラン社)。
編成 フルート,ヴィオラ,ハープ
演奏時間 約17分
初演 1917年 4月21日,独立音楽協会定期演奏会(パリ)。マヌーヴリエ(フルート),ジャレッキ(ヴィオラ),ピエール・ジャメ(ハープ)
※某書(音楽之友社)に「セヌーブリエ」とあるのは誤りです。デュラン社の作品目録(1962)は粗いため,ヴィオラとハープの下のお名前は分かりません。
推薦盤

★★★★★
"Les Trois Sonates :
Sonate pour Flûte, alto et Harpe / Sonate pour Violon et Piano / Sonate pour Violoncelle et Piano" (Accord: 205152)

Pascal Roge (p) Pascal Bernold (fl) Bruno Pasquier (vla) Frédérique Cambreling (hrp) Régis Pasquier (vln) François Guye (vc)
自身ピアニストだったせいか,ドビュッシーの室内・器楽作品は多くありません。しかし最晩年になってドビュッシーは,矢継ぎ早に3つ,異なる楽器のためのソナタを作曲しました。それらを一枚にまとめたのがこのCDです。巨匠による競合盤も多数ある中で,本アコール盤は知名度こそ芳しくありませんけれど,当時のフランス楽壇を代表する名手を集め意欲的な人選も相俟って,内容は大変に充実したものです。独奏者としてはもう一つのロジェが,ここでは目の覚めるような伴奏を披露。プーランクのソナタ集といい,この人はソロ演奏家としてやるより,伴奏者として活動するほうが数段良い働きをする人だと思います。いっぽう『ハープのソナタ』はやや知名度落ちなメンバーですが,ハープはパリ音楽院一等ののち,仏国立管のソロ・ハーピストにもなった名手。リヨン管の首席フルート奏者ベルノルド,パリ・オペラ座および仏国立管の首席ヴィオラのパスキエと実力者が揃い,ギリシャの女官たちが午後のうららかな日射しの下で微睡んでいるかのような,柔和このうえない風情が素晴らしい。特に第一楽章が持つ古楽的な柔らかさを,この盤ほど巧みに捉えた演奏はないと思います。

★★★★☆
"Introduction et Allegro (Ravel) Conte Fantastique / Deux Divertissements (Caplet) Sonate pour Flûte, Alto et Harpe (Debussy)" (Claves : CD 50-280)
Ursula Holliger (hrp) Peter-Lukas Graf (fl) Serge Collot (vla) Hans Rudolf Stalder (cl) Die Kammermusiker Zürich
ハープという楽器が,近代作家の注目の的になったのは意外に最近のことで,1894年にプレイエル社が製造したクロマティック・ハープの登場が嚆矢となりました。弦を増やして半音階を容易に演奏できるようになったこのハープにより,ハープの持つポテンシャルは飛躍的に高められたのでした。こうなれば,もともとアルカイックで得難い音色を持つ楽器のことです。幾らでも典雅な効果を期待できる。程なく,新しい世代の作曲家は,競ってこの楽器から新しい音色を引き出す試みを始めます。近代フランスのハープ作品と言われて,すぐにピエルネやトゥルニエらの名前が思い浮かぶ反面,いわゆる旧態然とした作家たちの中に,すぐ思いつくハープ作品がない事実。面白いと思いませんか?この楽器は当時,新旧世代を分ける分水嶺の役割すら果たしていたわけです。本CDは,そんな新世代を代表した三人の作曲家のハープ作品を集めた選集。バーゼル及びブリュッセル音楽院で学んだ美貌のハーピスト,ウルスラ・ホリガー女史を始め,スイス楽壇の演奏陣が集まって制作したフランス室内楽曲選(パリ出身のセルジュ・コローのみ例外。彼はパレナン四重奏団の一員です)。出自からでしょうか。仏楽壇の横綱盤であるキャンブレリング盤に比べるとやや表情が硬く,テンポも速め。匂い立つような香気や柔和なふくよかさこそありませんが,細部を疎かにせず丁寧に整えていくカッチリとした律儀な佇まいは,本演ならではの美点。凛とした2楽章の美しさは彼らの真骨頂というべきものです。
(評点は『フルート,ヴィオラとハープのためのソナタ』一曲のものです)
(2003. 5. 23 upload)








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